海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「最終兵器V-3を追え」イブ・メルキオー

まずは、長い前置きから。近現代史を背景とするスパイ/冒険小説で、最も登板数の多い〝敵/悪役〟は、言うまでもなくナチス・ドイツだろう。総統ヒトラーを軸に集結した多種多様で強烈な個性を持つ側近や軍人、科学技術を駆使した軍事兵器の〝先進性〟、排…

「極大射程」スティーヴン・ハンター

1993年発表、ハンターを一躍メジャーな作家に押し上げたボブ・リー・スワガーシリーズ第1弾。銃器への偏愛が全編にわたり横溢し、かの大藪春彦を彷彿とさせるほど。マニアックなディテールは、時に筋の流れを堰き止めかねない分量に及ぶ。だが、勢いのまま…

「装飾庭園殺人事件」ジェフ・ニコルスン

1989年発表のメタ・ミステリ。いわゆるポスト・モダン的な文学志向の強い作品に位置付けられており、ミステリとしての水準は端から期待できない。 メディアでも活躍していた中年の造園家ウィズデンがホテルの一室で自殺した。妻のリビーは頑なに他殺を主張。…

「マンハッタンは闇に震える」トマス・チャステイン

チャステイン熟練の技巧が冴える傑作。ニューヨーク市警16分署次席警視マックス・カウフマンを主人公とした第3弾。本シリーズの魅力は、超過密都市でしか起こり得ない大掛かりな犯罪の独創的着想、警察組織の機動力をフルに生かしたダイナミックな捜査活動…

「ウィンブルドン」ラッセル・ブラッドン

1977年発表、プロスポーツを題材としたサスペンス小説の名編。テニスの国際大会「ウィンブルドン」を舞台に犯罪の顚末を描くのだが、本作がメインに据えているのは、若き天才テニス・プレイヤー二人が切磋琢磨し、頂点へと上り詰めていく過程だ。豪快且つ正…