海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「Yの悲劇」エラリイ・クイーン 【名作探訪】

まずは私的な述懐から。以前「旅の記録」の拙文でも触れたのだが、私の海外ミステリ〝初体験〟は「Yの悲劇」(1932)だった。まだ十代の頃、気ままに選んでいた国内/海外文学の流れで出会った。各種ランキングで長らく不動の首位に輝いていた本格推理小説…

時計の針を巻き戻す【名作探訪/序】

本ブログ開設は2015年6月。レビュー数は、ようやく500を超えた。実質、1年間の数は100作品にも満たない。どうにも中途半端な数字だが、これが私にとっては自然なペースなのだろう。スタート時に掲載した大半は単なる覚え書き同然で、偉そうにレビューと掲…

「最後に死すべき男」マイケル・ドブズ

ナチス・ドイツ終焉を一人の男の冒険を通して鮮やかに刻印する傑作。幕開けは現代。自らの死期が迫っていることを悟った英国外務省の元官僚キャゾレットは、今まで避けていたベルリンを初めて訪れた。彼は観光の途中、ふらりと立ち寄った骨董品店で思い掛け…