海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「獅子の怒り」ジャック・ヒギンズ

のっけからの余談、ご容赦を。またしても早川書房「ミステリマガジン」について書き記しておきたい。2022年9月号で「ヒギンズの追悼特集」をすると告知していた。少なくとも、ジョン・ル・カレ追悼(2021年7月号)並みのボリュームはあるはずだと、と古く…

「消された眼」ジョン・サンドフォード

人間は、死の間際に何を視るのか。ベトナム帰還兵マイケル・ベッカーは、アジアの地で三人の娼婦を絞殺した。最初の女は殺人者の眼を凝視しながら死んだ。直後に悪夢を見るようになったベッカーは、それを逃れるために薬物を乱用した。次からは死人の眼を潰…

「マルベリー作戦」ダニエル・シルヴァ

ノルマンディー上陸作戦を巡る英対独の諜報戦を描いたスパイ・スリラーで、1996年発表作。シルヴァはこのデビュー作で評価され、以降ベストセラー作家として大成した。題材として近い〝ケン・フォレットの傑作「針の眼」(1978)に迫る面白さ〟という評判は…

「モンマルトルのメグレ」ジョルジュ・シムノン

こってりとした重厚な味を堪能した後には、さっぱりとした軽めの味を楽しみたい。ミステリも一緒だ。ただ私の嗜好に過ぎないが、昨今流行りのコージーミステリには全く食指が動かない。日常の延長で〝ほっこり〟するよりも、非日常へといざなう最低限の刺激…