海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「ザ・ボーダー」ドン・ウィンズロウ

麻薬戦争の実態を抉り出し、巨大カルテルに立ち向かう男の熾烈な闘いを熱い筆致で活写/記録した現代の犯罪小説/ノワールの極北「犬の力」(2005)、「ザ・カルテル」(2015)。この続編が発表されたと知った時は、かなり驚いた。凄まじいカタルシスを得て物語…

「クラッシャーズ」デイナ・ヘインズ

ジェット旅客機墜落の真相を探るチームの活躍を、読み手の度肝を抜く壮大なスケールで描いた2010年発表作。謎解きと活劇の要素を巧みに織り交ぜ、劇的な場景を随所に盛り込み、全編ハイテンションで展開。筆致は極めて映像的で、ハリウッド映画張りの娯楽大…

「暗い森の少女」ジョン・ソール

モダンホラーの〝古典〟として評価を得ている1977年発表作。100年前、断崖に面した森の中で、実の父親に陵辱されて死んだ少女の怨念が、のちの世に新たな惨劇をもたらす。その犠牲となるのが、親の世代では無く〝同世代〟の無垢な子どもたちという設定が肝だ…

「偶然の犯罪」ジョン・ハットン

1983年発表、英国CWAゴールド・ダガー受賞作。米国MWAもそうだが、1年間に出版された膨大な作品の中から、何を基準にベストを選出したのか首を傾げる場合も多い。日本の雑多なランキングも、信頼度では言うに及ばずなのだが。 主人公は、師範学校の中…

千切れたノート

新しいノートを何気なく手に取った。 パラパラとページをめくりさて何を書こうかと思案していた時、私はあることに気づいた。 ちょうどノートの中ほどに一枚分が破かれた跡を見つけた。 勢いよく引き千切った様子を物語るギザギザのまま残った切れはし。 い…