海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「諜報作戦/D13峰登頂」アンドルー・ガーヴ

サスペンスの名手として知られるガーヴ、1969年発表の本格冒険小説。翻訳文庫版で230頁ほどの短い作品だが、冒険に賭ける男のロマンをストレートに謳い上げた秀作だ。最新鋭スパイカメラを積んだNATO軍用機が東側に寝返ったドイツ人技術者にハイジャックされ…

「三つの道」ロス・マクドナルド

私立探偵リュウ・アーチャーの創造によって、ハードボイルドの新たな地平を切り拓く前夜、1948年に本名ケネス・ミラーで発表した最後の作品。以前に書いたレビューの繰り返しとなるが、初期4作については、創作への迷いさえ感じとれる素描のようなものだ。…

「ニューヨーク1954」デイヴィッド・C・テイラー

読み終えて溜め息をつく。満足感ではなく、脱力によって。1954年、マッカーシズム吹き荒れるアメリカ。ニューヨーク市警の刑事マイケル・キャシディは、ダンサーのイングラム惨殺事件を担当する。男は拷問を受け、自宅は荒らされていた。間もなくFBI局員…

「叛逆の赤い星」ジョン・クルーズ

激闘の果て、心を震わす終幕。優れた小説は須くカタルシスを得るものだが、重く哀しい情景で終える物語であれば、それはなお倍加され、胸の奥深くに感動が刻まれていく。愛する者を守るため、我が身を焼き尽くす滅びの美学。数奇な運命に翻弄されながらも、…

「子供たちはどこにいる」メアリ・ヒギンズ・クラーク

「サスペンスの女王」と謳われたクラーク、1975年発表作。多角的視点を巧みに用い、読み手を一気に引き込んでいく技倆は流石だ。発端から結末まで余分な贅肉が無く、秀れたサスペンス小説は、引き締まった構成によって生まれるのだと改めて感じた。7年前、…

「ファイナル・オペレーション」ジョン・R・マキシム

1989年発表作。スパイスリラー、ハードボイルド、ラブロマンスなどをクロスオーバーしたオフビートなスタイルが魅力、と評価された作品。主人公バーナマンは、世界中の諜報機関が利用した元暗殺請負集団のリーダー。引退後は正体を隠し、仲間らと共に或る地…

「レッド・オクトーバーを追え」トム・クランシー

1984年発表のデビュー作。テクノスリラー躍進の草分けとなった世界的ベストセラーで、本作をきっかけに同種の軍事シミュレーション小説が一気に量産されることになる。 ソ連が開発した超大型ミサイル原潜レッド・オクトーバー。軍事訓練を兼ねて大西洋への処…