海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ファイナル・オペレーション」ジョン・R・マキシム

1989年発表作。スパイスリラー、ハードボイルド、ラブロマンスなどをクロスオーバーしたオフビートなスタイルが魅力、と評価された作品。
主人公バーナマンは、世界中の諜報機関が利用した元暗殺請負集団のリーダー。引退後は正体を隠し、仲間らと共に或る地方都市に移住したが、以降その街では不審死が急激に増える。バーナマンは、問題解決の手段として元殺し屋らがいとも容易く殺人を選ぶ〝後遺症〟に頭を抱えていた。そんな中、バーナマンがたまたま惚れた女が、元敏腕警官レスコーの娘だったことから、いらぬトラブルを抱える羽目になる。レスコーは過去の事件で、麻薬密輸組織の大物と関わり、それには米国諜報機関が絡んでいた。以前からバーナマンを敵視し、因縁浅からぬCIA幹部リードは、バーナマンとレスコーの関係を問題視した。この二人が結びつくことで、諜報活動を悪用したリードの背任が発覚する恐れがあったからだ。極度の偏執症であるリードは、元暗殺者らの狙いを探るため、独断で罠を仕掛け始める。バーナマンは、恋人の父親が何者かも知らず、ただ単純に恋愛を楽しんでいただけだったが、売られたケンカは買う決意をし、元工作員/殺しのプロらを率いて対抗する。

どうにも粗筋をすっきりとまとめることが出来ないのだが、実は大して支障がないのが本作最大の欠点だろう。確かに様々な要素を取り入れてはいるものの、全てが中途半端で基軸となるストーリーがぼやけてしまっている。
以下、全て文句の羅列となる。核となる陰謀自体がそもそも曖昧模糊としており、それを巡るドタバタ劇も緊張感に欠け、一向に盛り上がらない。とにかく構成が緩く、起伏に乏しい。人物造形も浅く、感情移入できるほどの魅力を持つ人物がいないのも痛い。暗殺集団の個々の生かし方が無骨で、プロフェッショナルを感じる工作もない。登場人物はやたらと多いのだが、整理しきれていない。元警官が死んだ同僚らの亡霊と常に会話し、現状を整理するという奇抜な設定も活きることがない。何より、悪役が迫力不足で、決着の付け方も安易だ。
恐らく、パロディとして謀略小説の馬鹿馬鹿しさを茶化したのだろうが、完成度は低い。何よりも長過ぎる。エピローグの2、3ページさえ読むことが苦痛だった。「変な小説」という〝売り〟が、さっぱり面白くないのでは価値がない。

 評価 ★