海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「ブラック・ハート」マイクル・コナリー

ハリー・ボッシュシリーズ第3作。前作までの荒々しさが消え、プロットはより練り込まれ、洗練されている。三人称でありながら主人公に視点をしっかりと据え、その行動を通してしか物語が進行しない。このシリーズがハードボイルドたる所以の一つであり、ミ…

「友よ、戦いの果てに」ジェイムズ・クラムリー

唖然とするほどの駄作である。 クラムリーの「不幸」とは、初期作品で過分な評価を受け、一気に神格化されてしまったことにある。ハードボイルド小説としては異端のはずのクラムリーが正統派として売り出されるほどに、出版界はチャンドラーの後継者探しに躍…

「致命傷」スティーヴン・グリーンリーフ

1979年発表の私立探偵ジョン・マーシャル・タナーシリーズ第1作。実直で正義感に溢れる男のストレートなハードボイルドとして、安定した実力と高い人気を誇る。初登場となる本作では、消費者運動の指導者としてヒーローとなったローランドの家族を巡る20年越…

「偽りの楽園」トム・ロブ・スミス

敢えて「結論」から述べれば、実験的な構成が裏目に出た凡作である。 傑作レオ・デミドフシリーズの超ド級スリラー路線に一旦区切りを付けたトム・ロブ・スミスが新境地を開いたと評される最新作であり、いやが上にも期待は高まったのだが、中盤まで読み進め…

「ストレートタイム」エドワード・バンカー

元犯罪者バンカーが服役中に執筆し、出版後は高い評価を得たという曰くつきのクライムノベル。 自らの過去を基にしていることもあり、仮釈放から再び犯罪に手を染めるまでをリアリティ溢れる展開で読ませるが、やや気負い過ぎてテンポが失われているのが残念…

「スティンガー」ロバート・R・マキャモン

発表時、キングやクーンツを継ぐ「第三の男」と呼ばれたマキャモンによるSF+モダンホラー。異星人の乗った宇宙船がアメリカの片田舎に相次いで飛来する。一体は、逃亡を図った囚人。もう一方は、賞金稼ぎのハンター。この二体のエイリアンの出現によって、…