海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「死刑台のエレベーター」ノエル・カレフ

ノエル・カレフ1956年発表の小説で、翌年撮影されたルイ・マル監督の映画化によって、世界的な知名度を誇るミステリ。身も蓋もない話だが、個人的には両作含めて「死刑台のエレベーター」に関しては、映画音楽としては革新的ともいえる即興演奏によって、作…

「窓際のスパイ」ミック・ヘロン

落ちこぼれの個人やグループが千載一遇のチャンスを機に奮闘、大逆転劇を演じて栄光を勝ち取るという設定は、娯楽映画/小説では常套のため、よほどの新機軸を盛り込まないと「またか」という印象になりかねない。本作は〝泥沼の家〟と揶揄されている英国諜…

「カメレオン」ウィリアム・ディール

石油利権を巡る巨大多国籍企業の謀略と、その転覆を謀るために暗躍する正体不明の男〝カメレオン〟の対決を主軸とした1984年発表のスリラー。日本を主な舞台とした異色作であり、トレヴェニアン「シブミ」(1979)の影響が色濃い。ただ、外国人作家が陥りや…

「流刑地サートからの脱出」リチャード・ハーレイ

監獄と化した絶海の孤島を舞台とする異色の冒険小説で1987年発表作。ハーレイの翻訳は、現在のところ本作のみのようだが、筆力があり一気に読ませる秀作だ。 同様の設定で連想させるのは、実話を基にしたクリント・イーストウッド主演の映画「アルカトラズか…

「グリッツ」エルモア・レナード

1985年発表作。エルモア・レナードがミステリ作家としては稀ともいえる脚光を浴びて、一躍著名人となった時期にあたる。当時レナードは本作タイトル「グリッツ(金ぴか)」の通り、昂揚感に満ち、充実した生活を送っていたのだろう。本作も生きの良い会話が…