海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「ブルックリンの少女」ギヨーム・ミュッソ

フランスのベストセラー作家による2016年発表作。突然失踪した婚約者の行方を追う男。手掛かりを求めて女の過去を掘り起こしていくが、その過程で鍵となる関係者らが次々に不可解な死を遂げる。わたしの愛した女は、いったい何者だったのか。主人公は、人気…

「南極大氷原北上す」リチャード・モラン

本作の時代設定は、〝近未来〟の1995年(発表は1986年)。大規模な地質学的流動により南極大陸下の海底噴火口からマグマが噴出。その結果、32万平方キロメートルに及ぶ巨大なロス棚氷が大陸と分離され、太平洋へと流れ出す。この棚氷が溶けた場合、海の水位…

「獅子とともに横たわれ」ケン・フォレット

稀代のストーリーテラー、フォレット1985年発表作。舞台は1982年のアフガニスタン。3年前に軍事侵攻したソ連とイスラム原理主義を掲げるゲリラの戦いは膠着状態にあった。米国は対共産主義の戦略的要衝としてアフガンを重視。ソ連に対抗するためには、散発…

「ストーン・シティ」ミッチェル・スミス

発端から結末まで刑務所内のみで展開する異色のサスペンスで、獄中で発生した連続殺人の真相を囚人が探るという大胆な着想が光る1989年発表作。上下巻に及ぶボリュームだが、特異なエピソードを盛り込んで高いテンションを保っており中弛みはない。前作「エ…

「SSハンター」シェル・タルミー

ツイストを効かせた復讐譚の秀作で1981年発表作。タルミーの翻訳は本作のみだが、筆力があり、プロットも練られている。マーク・セバスチャンは、復讐を果たすためだけに生きてきた。元SS将校四人を必ず見つけ出し、この手で決着を付ける。三十年前の1940…