海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「ガラスの村」エラリイ・クイーン

クイーン後期の〝問題作〟とされている1954年発表作。本作に犯罪研究家エラリイ・クイーンは登場せず、元軍人ジョニー・シンが主な謎解き役兼狂言回しとなる。同時期に米国で吹き荒れたマッカーシズムに対する義憤から着想を得たとういうのが定説らしいが、…

「凍氷」ジェイムズ・トンプソン

カリ・ヴァーラシリーズ第2作。無残な人間の業がもたらす犯罪の顛末を陰影のあるノワールタッチで描いた前作に続き、本作も発端から結末までダークなトーンで包まれており、息苦しくなるような緊張感に包まれている。物語は、ロシア人実業家の妻が拷問の果…

「闇の奥へ」クレイグ・トーマス

冒険小説全盛期の1985年発表作で、クレイグ・トーマス渾身の長編。原題は「The Bear's Tears」だが、日本版タイトルは作品中にも登場するコンラッド「闇の奧」に倣い付けられている。KGBの謀略によって二重スパイ〈もぐら〉に仕立て上げられたSIS長官…

「ごみ溜めの犬」ロバート・キャンベル

シカゴの「民主党27区」地区班長ジミー・フラナリーを主人公とするシリーズ第一作。変わった設定ではあるが、党の宣伝を兼ねつつ市井の人々に触れ、相談事に乗り、時に問題を解決していくという役割は、報酬を求めない変種のトラブルシューターといったとこ…

「スピアフィッシュの機密」ブライアン・キャリスン

海洋冒険小説を得意とするキャリスンが、謀略の絡んだ謎解きに重点を置いた1983年発表作。 傭兵クロフツは、アンゴラでの作戦失敗により長年行動を共にした仲間を失い、殺しの稼業から足を洗う。ロンドン到着後、同じく傭兵仲間であったハーレイがスコットラ…

「沈黙のセールスマン」マイクル・Z・リューイン

インディアナポリスの〝貧乏〟私立探偵アルバート・サムスンを主人公とする第4作、1978年発表作。「知性派の探偵」として日本でも高い人気を誇ったシリーズで、本作はその代表作とされている。 ある製薬会社の事故で重傷を負った男が、会社管理下の病棟に収…

「女テロリストを殺せ」ギイ・テセール

フランス人作家による1980年発表のスパイ・サスペンス。 ヨーロッパ各地でテロを主導するドイツ生まれの女テロリスト、ビルギット・ハースの行動は常に監視下にあった。ハース逮捕によって自国内での報復的なテロ激化を憂慮したドイツ情報部は、フランス国土…

「特捜部Q ―キジ殺し―」ユッシ・エーズラ・オールスン

シリーズ第2作。デンマーク警察の「特捜部Q 」責任者で主人公のカール・マーク警部補、助手でアラブ人のアサド、さらに本作からアシスタントとなるローセ。未解決となった不可解な事件を個性豊かな刑事らが地道に再調査し解決していくという骨子は良く出来…