海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「ツーリスト ~沈みゆく帝国のスパイ~」オレン・スタインハウアー

「単にサスペンスフルというだけでなく、現在の混沌とした情勢を映しつつも明快な物語を持ち、大きな体躯にはトリッキーな企みが神経繊維のように緻密に張り巡らされた快作」……以上は私の評価ではない。批評家霜月蒼が口を極めて褒め称えている巻末解説の一…

「雪は汚れていた」ジョルジュ・シムノン

1948年発表、シムノン初期の代表作とされている。フランス文学界の重鎮ジッドやモーリアックらが絶賛、アルベール・カミュの「異邦人」を凌駕するほどの評価を得たという。舞台はドイツ軍占領下の小都市。19歳のフランク・フリードマイヤーは、占領軍相手の…

「探偵の帰郷」スティーヴン・グリーンリーフ

1983年発表、私立探偵ジョン・マーシャル・タナーシリーズ第4弾。デビュー以来〝正統派ハードボイルド〟の継承者として安定した評価を得ていたグリーンリーフは、本作によって固定化したイメージからの脱却を図っている。といっても、60年代後半から70年代…

「蜂工場」イアン・バンクス

1984年発表、クライヴ・バーカーらと並びホラー新世代を代表する作家として評価を得ていたバンクスのデビュー作。本の表紙に「結末を誰にも話さないように」とわざわざ刷り込み、粗筋紹介などでも際物的な先入観を植え付けるのだが、確かに特異な顛末は辿る…

「遅番記者」ジェイムズ・プレストン・ジラード

冒頭から一気に引き込まれた。舞台は米国カンザス州の都市ウィチタ。やさぐれた中年の刑事が犯行現場へと向かう。一旦は途絶えたかにみえた猟奇的殺人が6年を経て再び繰り返された。いまだ未解決となっている経緯を振り返りつつ、私生活では離婚の危機を迎…