海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「死が二人を」エド・マクベイン

1959年発表の「87分署シリーズ」第9作目で、スティーヴ・キャレラの妹が結婚する一日に巻き起こる騒動を描いた番外編的な一編。他の作品に比べて舞台設定や登場人物は限定されているが、その分ストーリーは淀みなく快調で、マクベインの技倆を存分に堪能で…

「音の手がかり」デイヴィッド・ローン

1990年発表作。主人公は元音響技師ハーレック。映画撮影中の事故で全盲となるが、聴覚はより一層鋭敏となり、繊細な音の違いを聞き分ける能力に長ける。さらに、記録した音から実体を掴み取るテクノロジーにも精通する。以上が前提となり、リアリティよりも…

「カメンスキーの〈小さな死〉」チャールズ・マッキャリー

米国諜報機関工作員ポール・クリストファーシリーズ1977年発表作。翻訳数が少ないため一概には言えないのだが、マッキャリーは一作ごとに趣向を凝らしており、同一の主人公でありながらも随分と印象が異なる。基本軸は、激動の国際情勢を背景に謀略の渦中へ…

「悪魔の分け前」マーティン・ケイディン

1966年発表のスリラー。米国の原発からプルトニウムを強奪し、南米のナチス残党に売り渡す計画を立てた犯罪グループの行動を描く。極めて狡猾な犯罪者らは独自のプロ意識を持ち、順当に仕事を進めるのだが、やがては内輪の確執により破滅への道を辿っていく…

「フーリガン」ウィリアム・ディール

ハメットへのオマージュとして作者自身が位置付けている1984年発表作。ベースは「赤い収穫」だが、単純な焼き直しではなく、全体的な趣きは随分と異なる。恐らく、停滞したハードボイルドへのディールなりのアプローチなのだろう。主人公は、FBI特別捜査…