海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「悪魔の分け前」マーティン・ケイディン

1966年発表のスリラー。米国の原発からプルトニウムを強奪し、南米のナチス残党に売り渡す計画を立てた犯罪グループの行動を描く。極めて狡猾な犯罪者らは独自のプロ意識を持ち、順当に仕事を進めるのだが、やがては内輪の確執により破滅への道を辿っていく。本作のラストシーンの空虚さは、犯罪小説の中でも白眉だろう。
ケイディンは、第二大戦中は爆撃機を操縦、その後は航空記者として活躍したらしい。飛行シーンの描写がリアルなのも頷ける。

評価 ★★★

悪魔の分け前 (1979年) (ハヤカワ文庫―NV)

悪魔の分け前 (1979年) (ハヤカワ文庫―NV)