海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「二日酔いのバラード」ウォーレン・マーフィー

保険調査員トレース・シリーズ第1弾で、1983年発表作。続編もコンスタントに飜訳されており、それなりに人気があったようだ。だが、軽ハードボイルドとして読んだ中では、最も薄味で読み終えて何も残らない。プロットも瞬時に記憶から消えていた。酒飲みで…

「リンガラ・コード」ウオーレン・キーファー

1972年発表作。凋落した帝国主義国家ベルギーの植民地コンゴ。その豊富な資源を巡る紛争を主軸に、傀儡政権と反政府ゲリラ、その影にいる米ソなどの思惑が入り乱れた諜報戦が展開する。テーマが絞り切れておらず、構成力が弱い。相関関係が整理しきれていな…

「ケンブリッジ・シックス」チャールズ・カミング

スパイ小説は当たり外れが特に多いジャンルで、ル・カレやグリーンを継ぐ、フォーサイスと比肩する、注目の大型新人登場など、威勢の良い宣伝常套句の大半は眉唾物なのだが、中には大傑作も当然含まれているため、読書リストから外すわけにはいかない。だが…

「クリスマスのフロスト」R・D・ウィングフィールド

日本でも根強い人気を誇るフロストシリーズ。下品でくだらない冗句を吐き、警部でありながら単独行動を好むという著しく管理能力に欠ける一方で、憎むべき犯罪に対しては鋭く臭覚を働かせ、粘り強く犯人に迫っていく持久力を持つ男。極端な仕事中毒者として…