海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「リンガラ・コード」ウオーレン・キーファー

1972年発表作。凋落した帝国主義国家ベルギーの植民地コンゴ。その豊富な資源を巡る紛争を主軸に、傀儡政権と反政府ゲリラ、その影にいる米ソなどの思惑が入り乱れた諜報戦が展開する。テーマが絞り切れておらず、構成力が弱い。相関関係が整理しきれていないため、真相が明らかとなっても、都合のよさだけが目立ってしまう。MWA最優秀長編賞受賞作だが、当時は〝熱い〟テーマであったアフリカを舞台としたことが評価されたのだろう。本筋と大きく関わることは無いのだが、主人公ミシェル・ヴァーノンの素性がラストで明かされる。物語の中で或る違和感を感じつつ読み進めていたのだが、結末で氷解した。キーファーは極めて巧みに情景の中に忍ばせ、数シーンで仄めかしている。

評価 ★★

リンガラ・コード (角川文庫)

リンガラ・コード (角川文庫)