海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「二日酔いのバラード」ウォーレン・マーフィー

保険調査員トレース・シリーズ第1弾で、1983年発表作。続編もコンスタントに飜訳されており、それなりに人気があったようだ。だが、軽ハードボイルドとして読んだ中では、最も薄味で読み終えて何も残らない。プロットも瞬時に記憶から消えていた。酒飲みで女好きという探偵は、あまりにもオーソドックスで新鮮味がなく、売りである軽口は単なる酔っ払いの世迷言と一緒。深みがないならば、ストーリーの面白さを求めたいところだが、ミステリとしての味わいもさっぱりだ。本シリーズは、ユーモアのセンスに馴染めるかどうかで評価は変わるのだが、会話主体でテンポ良く読めるという点以外、私には今ひとつ。軽薄な〝ノリ〟や、主人公のライフスタイルに魅力を感じなかったためだろう。

 評価 ★

 

二日酔いのバラード (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 111‐1))

二日酔いのバラード (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 111‐1))