海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-08-21から1日間の記事一覧

「ボーン・マン」ジョージ・C・チェスブロ

実力派チェスブロの1989年発表作。娯楽的要素を盛り込んだ一味違うスリラーで、埋もれたままにしておくのは惜しい秀作だ。 激しい雨が降り続いていたニューヨーク/セントラル・パーク。その一角で憔悴した状態の浮浪者が市に保護された。男は入院後しばらく…

「死体が転がりこんできた」ブレット・ハリデイ

1942年発表のマイアミの私立探偵マイケル・シェーン第6弾。同年にチャンドラーが「大いなる眠り」を上梓、ハードボイルド小説隆盛期に当たる。戦時下ということもあり、暗躍するナチスのスパイを絡め、この派にしては珍しくプロットに凝り、捻りを利かせて…

「ツンドラの殺意」スチュアート・カミンスキー

ソビエト連邦崩壊前、極寒のシベリア地方の小村を舞台とした異色の警察小説。エド・マクベイン「87分署シリーズ」へのオマージュらしいが、終始暗鬱なトーンに包まれており、アイソラの刑事たちが醸し出す躍動感は無い。歪んだイデオロギーが暗流に淀み、自…