如何にして読者を欺くか。ミステリ作家の腕の見せ所であり、読者はエンターテインメント小説として〝気持ち良く〟騙されることを望む。単に複雑なプロットを盛り込んだだけでは成功しない。シンプルなストーリーでも逆転の手法が冴えていれば幾らでも面白くできる。常に高いクオリティーを維持し、現在も第一線で活躍する希有な作家の一人、ジェフリー・ディヴァー円熟の腕が冴える。
科学捜査官リンカーン・ライムシリーズ第2弾で1998年発表作。四肢麻痺であるライムが捜査活動の手足とする女性警察官アメリア・サックスと組み、知能犯と対決する骨子は、いわば現代版ネロ・ウルフといった感じか。ズバ抜けた知識と頭脳で謎を解くウルフと最先端科学を駆使するライムでは捜査法に大きな違いはあるものの、犯行現場を殆ど見ることなく犯人を追い詰める安楽椅子探偵として共通する部分は多い。
物語の軸はライムと犯罪者の知恵比べだが、ディーヴァーは読み手自身に〝この真相が解けるか〟を挑んでくる。二重三重を遥かに上回る仕掛け、微に入り細に入り潜めた伏線、ラストに向かって疾走しつつ全ての謎を回収/解き明かし、鮮やかな大団円へと繋いでいく。その技法はミステリ作家の中でも飛び抜けており、文章/構成そのものがミスディレクションとなって読み手を翻弄する。サブ・ストーリーとなるアメリア・サックスとの恋愛模様などは、ややサービス過剰な感じはしたが、まあ娯楽小説として割り切ればよい。
本シリーズ最大の魅力は、主人公の知能に匹敵する〝好敵手〟との対決。エッジの効いた展開は尽きる事がなく、本作でもディーヴァーの真髄が存分に味わえるだろう。
評価 ★★★★

