海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ありがとう、ジャック・ヒギンズ

ジャック・ヒギンズ(本名ヘンリー・パターソン)が、2022年4月9日、英領チャネル諸島ジャージー島の自宅で死去した。92歳だった。年齢を考えれば、大往生だろう。けれども、まだまだ生きる伝説として、衰退した冒険小説界を鼓舞して欲しかった。代表作「鷲…

「ブランデンブルクの誓約」グレン・ミード

1994年上梓のデビュー作。この後にスパイ/冒険小説史上屈指の名作「雪の狼」を書き上げるのだが、本作はナチス残党の謀略に主眼を置いており、冒険的要素は薄い。けれども、目的に向かって闘う不屈の男を軸に、多彩な登場人物が入り乱れるストーリーは、翻…

「赤毛の男の妻」ビル・S・バリンジャー

医者を志しながらも環境に恵まれず、貧しい人生を歩んできた男。彼にとっては、学生時代に出会い、激しい恋に落ちた美しい女だけが心の拠り所だった。だが、格差故に引き離され、放浪。長い年月を経て行き着いた果ては刑務所だった。やがて男は脱獄し、その…

「24時間」グレッグ・アイルズ

米国のベストセラー作家による2000年発表のスリラーで、ストレートに「誘拐物」に挑んだ力作。身代金目当ての誘拐事件を扱うミステリは、警察/犯罪物を中心に数多いが、新たなアイデアを盛り込まなければ、過去作品の単なる焼き直しと評価されかねない。現…