海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「ゼロ・アワー」ジョゼフ・フィンダー

1996年発表のスリラー。不法行為によって国外に逃れるも、妻と娘を追跡者に殺された富豪の男が、復讐のためにアメリカ経済破綻を狙ったテロを計画する。その実行に赴くのは、かつて南アフリカ諜報組織の敏腕工作員であったボーマン。思想を持たず、カネのた…

「腰ぬけ連盟」レックス・スタウト

ネロ・ウルフシリーズ第2弾で1935年発表作。探偵の特異なライフスタイルが、物語の展開に少なからずの影響を及ぼす奇抜さが本シリーズの特徴であり、面白さでもある。ウルフは「本格ミステリ黄金期」に活躍した探偵らのカリカチュアであり、アームチェア・…

「重力が衰えるとき」ジョージ・アレック・エフィンジャー

1987年発表、ハードボイルドのテイストを大胆に組み込んだ近未来SFで、飜訳された当時はミステリファンの間でも大いに話題となった。チャンドラー「簡単な殺人法」の一節を冒頭に置き、大真面目にオマージュを捧げている。 世界の政略図が書き換えられ、よ…

「リラ作戦の夜」マーヴィン・H・アルバート

1983年発表作。第二次大戦中のフランス南部にある港町ツーロンを舞台とした戦争冒険小説で、史実と虚構を巧みに織り交ぜている。 1942年秋。ドイツに敗北後、実質は傀儡に等しいヴィシー政権下のフランス。休戦協定によって小康状態にはあったが、所詮はまや…