海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「Q E2を盗め」ヴィクター・カニング

積ん読の山を崩して〝発掘〟。なぜ、早く読まなかったのかと後悔するほどの出来だ。硬質な筆致と手堅い人物造形。己の主義を貫く犯罪者たちの硬派なスタイルも良い。1969年発表、翻訳数が少ないカニングの実力に触れることができる犯罪小説の秀作。主人公は…

「海底の剣」ダンカン・カイル

1973年発表作。ソ連がカナダ沿岸の海底に配備した核ミサイルを固定する鎖が腐食し、暴発する可能性が浮上した。折しも同国では国際的な平和会議を予定しており、最悪の場合は戦争へと突入しかねない。ソ連政府は極秘裏にミサイル撤去の計画に着手するが、そ…

「ジレンマ」チェット・ウィリアムソン

1988年発表作。主人公は中年に差し掛かった男、ロバート・マッケイン。職業は個人営業の私立調査員。ハードボイルド・ヒーローへの憧れはあったが、現実は錯綜する謎の解明や拳銃をぶっ放すような暴力沙汰とは無縁であり、仕事は浮気調査で殆ど埋まっていた…

「ブラックランズ」ベリンダ・バウアー

2010年発表作。12歳の少年が、幼少期のおじが殺されるという過去の事件を〝解決〟することで、現在のぎくしゃくした家族関係を立て直そうとする。要は、絆がテーマといえるだろう。ただ、ムード優先で筋に捻りがないため、サスペンスとしては物足りない。女…