海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ブラックランズ」ベリンダ・バウアー

2010年発表作。12歳の少年が、幼少期のおじが殺されるという過去の事件を〝解決〟することで、現在のぎくしゃくした家族関係を立て直そうとする。要は、絆がテーマといえるだろう。ただ、ムード優先で筋に捻りがないため、サスペンスとしては物足りない。女性作家らしいきめ細やかな心理描写はいいのだが、主人公の動機や、殺人者の掘り下げが甘く、異常性は伝わるが、納得させるだけのリアリティが無い。いじめを受けている少年の脆弱さも気になる点で、終始傷つき泣き続けている。母親の愛人に対し失われた父性を求めるナイーブな表現は巧いが、全体的には浅い印象。獄中にいた殺人者が中盤であっさりと脱獄に成功するエピソードなども、やや作為的過ぎる。少年の祖母や母親らの一貫性無き感情の動きも気になった。

本作から始まるシリーズは概ね好評のようだが、私は序盤から駄目な作品だった。小児性愛サディズムなど、過激な要素を盛り込んではいるが、ミステリとしては凡庸で、新鮮味がない。
評価 ★★