ハメットへのオマージュとして作者自身が位置付けている1984年発表作。ベースは「赤い収穫」だが、単純な焼き直しではなく、全体的な趣きは随分と異なる。恐らく、停滞したハードボイルドへのディールなりのアプローチなのだろう。
主人公は、FBI特別捜査官ジェイク・キルマー。地方都市デューンタウンに、実体を隠したまま新たな縄張りを求めて侵攻したマフィア。ギャンブル、高利貸し、売春、麻薬など、ピラミッド型に組織化された巨大結社だったが、或る日を境に、各部門の元締めや幹部らが、自宅や街中で次々と殺されていく。殺害方法は多様で残忍。真っ先に地元ギャングの名が上がるが、内部抗争の線も捨て切れなかった。キルマーは、対抗するために地元警察の特捜班と組んで対抗するが、彼らはならず者(フーリガン)に等しい集団だった。
躍動感に満ちた活劇の中に感傷に満ちた情景を織り交ぜ、ディール独自の世界観を構築している。スピーディーな展開を重視、ディテールを積み重ね、骨太で分厚い物語に仕上がっているが、やや殺伐とした印象も残る。ストレートにマフィアとフーリガンの闘いを描くのではなく、正体不明の殺人者を絡めることで、プロットに捻りを加えており、曲者ディールならではの魅力に溢れた作品だ。
評価 ★★★