海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-06-03から1日間の記事一覧

「最後の暗殺」デニス・キルコモンズ

謀略の狭間で死闘を繰り広げるプロ対プロ。一方は引退間近のフリーランスの殺し屋、もう一方は引退同然だったMI6諜報員。どちらが先手を取り、より有効なダメージを与えるか。二人に共通するのは、些か錆び付いているとはいえ、時に鋭い光を放ち敵の眼を…

「10億ドルの頭脳」レン・デイトン

相変わらずの迷宮世界で独自のスパイ小説を構築するデイトン1966年発表作。共産圏壊滅を狙う極右組織。その実態は現実性に乏しい策略を捏ねくり回す素人集団に過ぎなかった。この滑稽な妄想家らの企みの穴に付け込み、フリーランスの工作員が暗躍、某国への…

「地獄の群衆」ジャック・ヒギンズ

1962年発表作。同年上梓の「復讐者の帰還」はなかなか読ませたが、本作はどう贔屓目に見ても習作どまり。この時期は出来不出来が激しかったようで、気負いが実作に結び付いていない。娼婦殺しの容疑者に仕立てられた男が刑務所から脱走し真相を追及するとい…