海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「暗い森の少女」ジョン・ソール

モダンホラーの〝古典〟として評価を得ている1977年発表作。
100年前、断崖に面した森の中で、実の父親に陵辱されて死んだ少女の怨念が、のちの世に新たな惨劇をもたらす。その犠牲となるのが、親の世代では無く〝同世代〟の無垢な子どもたちという設定が肝だろう。幸福な家庭を破滅させることで恨みを晴らす「少女」の捻れた狂気は、悲劇性よりも加虐的な面が強調されている。
ストーリーは極めてシンプルで、崩壊していく家族の有り様をじっくりと描き、流麗とはいかないまでも筆力はある。繰り返される惨事に人々は為す術もなく、現状を受け入れざるを得ないという虚無感も表現されている。結果的に真相は明らかにされず、事件も解決しない。消化不良気味ではあるのだが、これもモダンホラー独自のスタンダードな幕引きと捉えれば腹も立たない。

評価 ★★★

暗い森の少女 (ハヤカワ文庫 NV 189)

暗い森の少女 (ハヤカワ文庫 NV 189)