海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「エンドレス・ゲーム」ブライアン・フォーブス

映画俳優、監督でもあったフォーブス1986年発表作。英米で絶賛されたらしいが、続編ありきの中途半端な結末で、本作だけでは評価のしようがない。主人公はMI6諜報部員ヒルズデン。元同僚で恋人だった女の殺害事件が、国際的な謀略と繋がり、その真相を追い求めるというのが本筋だが、最後まで緊張感に乏しく、プロットも有名な作品を寄せ集めたような感じだ。ヒルズデンが偽装工作によって東側への亡命を謀る流れなど、ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」(1963)を多分に意識しているのだが、構成力と人物造型、非情な諜報戦の展開などにおいて、格の違いは明らかだ。
ル・カレは〈サーカス〉、フォーブスは〈商会〉、英国秘密情報部を指す様々な隠語は、スパイ小説作家のお家芸なのか。

評価 ★

エンドレス・ゲーム (扶桑社ミステリー)

エンドレス・ゲーム (扶桑社ミステリー)

 

 

エンドレス・ゲーム〈下〉 (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ)

エンドレス・ゲーム〈下〉 (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ)