大胆な着想で話題となった「タイタニックを引き揚げろ(1976) 」で人気に火がついたカッスラーが、その勢いのままに発表したダーク・ピットシリーズ第4弾。活劇を主体とするヒーロー小説で、リアリズムよりもスピード感に満ちたエンターテインメント性を重視する。頭脳明晰で強靱な肉体/精神力を持つ主人公が、仕組まれた謀略の謎を解き明かし、数多の試練を乗り越えて、時に国家存亡の危機を救うという一連の筋立ては、いかにも米国人好みで、幾つもの山場を用意した映画的な構成も極めて派手だ。要は、英国情報部員ジェイムズ・ボンドを、米国の特殊機関NUMA(国立海中海洋機関)」所属のダーク・ピットに置き換えたというところか。
本作は、過去に米軍が極秘裏に進めていた生物兵器実験が輸送機墜落により頓挫、その弾頭が南アフリカの反政府組織壊滅のために盗まれ、偽装工作として米国本土が砲撃される事態に陥るというもの。クライマックスでは、戦艦アイオワの船上で怒濤の戦闘シーンが展開するのだが、その中心にいるのは、当然不死身のヒーローである。
評価 ★★★