海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「裏切りのゲーム」ディヴィッド・ワイズ

1983年発表作。ワイズは米国のジャーナリストで、CIA内幕物のノンフィクションを何冊か書いている。内情には詳しいらしいが、その経験は本作に生かされてはいないと感じた。
謀略を巡る元スパイの捜査活動を主軸とし、娯楽的要素を重視。陰謀自体は荒唐無稽だが、筆力はあるため卒なく読ませる。ただ、十代の娘が拉致されているにも関わらず、主人公が女工作員との関係にうつつを抜かすなど、緊張感が緩い。エンターテインメント性に徹しようという意気込みは伝わるが、リアリティが弱まっている。肥大化した諜報機関の権力闘争を軸にするのであれば、もう少し捻りも欲しい。

 評価 ★★

裏切りのゲーム (新潮文庫)