海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2015-06-28から1日間の記事一覧

「暗殺者グレイマン」マーク・グリーニー

非情に徹し切れない暗殺者に、ヒーローとしてのぎりぎりの資格を与えている。 人を殺すことに正義という大義を加えることは、逆にあやふやなもどかしさも覚えるのだが。それにしても、久々のアクション小説として堪能した。多国籍企業のもとに金のためだけに…

「闇よ、我が手を取りたまえ」デニス・レヘイン

探偵パトリック&アンジーシリーズ第2作。 解説ではチャンドラーを継ぐハードボイルドの新鋭として捉えらていたらしいが、本作を読む限り作者にその意図は無いようだ。より現代的なスタイル、熱い語り口、事件を通して微妙な恋愛感情に揺れ動く二人。 主人公…

「ウォッチメイカー」ジェフリー・ディーヴァー

長い長い序章ともいうべき前半が過ぎれば、物語は一気に動き出す。よくもまぁ、これだけ複雑なプロットを捻り出したものだと感心。必ずどんでん返しが用意されている、と読み手は分かっている。その予想を遥かに超える仕掛けを組み込む作者の力量は凄い。 評…

「犬の力」ドン・ウィンズロウ

ドン・ウィンズロウ渾身の大作。 麻薬戦争と名付けられた余りにも愚かで残虐な血の抗争の記録。過去を語りながらも、常に現在進行形の文体で進み、否が応でも鋭い緊張感を読者に強いる。マフィアの復讐劇、大国と弱小国家の茶番的謀略、虐げられる民衆の悲劇…