海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2021-12-30から1日間の記事一覧

「ベルリン・レクイエム」フィリップ・カー

私立探偵ベルンハルト・グンターシリーズ第3弾で1991年発表作。デビュー作でハードボイルド、次作では警察小説、そして所謂〝ベルリン・ノワール〟の掉尾を飾る本作ではスパイ小説へのアプローチを試み、何れも高い評価を得た。 同一の主人公で一作ごとにコ…

「踊る黄金像」ドナルド・E・ウエストレイク

事の発端は、南米の最貧国デスカルソで起こる。ここの国立博物館には、数千年以上も前に創作されたという黄金の「踊るアステカ僧侶像」が厳重に保管されていた。同国政府は新たな観光資源とするべく、僧侶像の複製を作り、安価な工芸品として売り出すことと…

「チャイナマン」スティーヴン・レザー

1992年発表作。英国からの北アイルランド分離独立を目指すテロ組織IRAの行き詰まりを描き出したスリラー。特に主人公は設けず、暴力に彩られた闘争が行き着く果てを極めてドライに活写している。章立てが無く、場面展開が早い。登場人物が多く、状況を多角的…

「クレムリンの密書」ノエル・ベーン

出版当初は本に封を施し返金保証付きで売り出したという。ベーンは批評家らから高い評価を得ており、翻訳者も後書きで絶賛しているのだが、私は全く面白くなかった。中盤から興味を失い、嫌々読み終えたほどだ。「シャドウボクサー」(1969)でも感じたこと…