高い評価を得ている作品だが、さほど映画の世界に思い入れのない私にとっては困った代物だった。
本筋を単純化して述べれば、草創期のサイレントから70年代サブカルの隆盛期まで、退廃的ホラーの制作に、十字軍の時代から迫害され続けてきたキリスト教のカルトが関わっていたという何とも暗鬱な話である。フィルムにサブリミナルなどの特殊な加工を施し、陰惨な映像を脳内に植え付けることで性的欲望を減退させ、究極的には人類滅亡を謀る。つまりはハルマゲドンを狂った宗教組織自体が企む訳である。主人公の映画研究家は、カルトの主力として過去に活動した映画監督キャッスルに入れ込み、知らずの内に闇の世界へと足を踏み入れる。そして、キャッスルを再評価することで、図らずもその新たな後継者を世に送り出すこととなるのだが、その架空の映画というのが悪趣味極まりないもので、ヘタなホラー小説よりも嫌悪感を抱かせる。
さらに終盤では唖然とする展開が待っているのだが、敢えて物語を破綻させて、全てを闇に放り込んだこの作品はミステリに非ず。だが、万人受けはせずとも一部の熱狂的ファンを獲得する異端の小説であることは間違いない。
評価 ★★☆
- 作者: セオドアローザック,Theodore Roszak,田中靖
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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