海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「エスピオナージ」ピエール・ノール

冷戦期の非情な諜報戦を描いた1971年発表作。現題は「十三番目の自殺者」。ソ連高官の亡命をめぐる東西諜報機関の腹の探り合いを主軸に、同時期に続発した西側高級官僚の不可解な死の謎を絡めて、四部構成でじっくりと緊張感を高めていく。終盤では全ての伏線を回収して、真相を明快に解き明かし、見事なスパイ小説に仕上げている。フランス人作家ならではの屈折したツイストも大胆で刺激的だ。

評価 ★★★☆☆

エスピオナージ (1973年)

エスピオナージ (1973年)