序盤から終盤まで、凄まじい緊張と焦燥を読者に強いる。スターリンの恐怖政治の実像を、本書のみに頼るのは危険だが、恐るべき筆力で疾走するストーリー展開は、娯楽小説としての真髄を見せ付けてくれる。とはいえ、描かれているのは、この世の地獄巡りだが…。
死のみが希望となる世界。
誰も信じることができず、誰にも信じてもらうことができない。例え愛する者でさえ。
偽りの愛からの再生。眼前にある己の死を、せめて意味のあるものとするために、暗黒の中でひたすら逃げ、そして国家が作り上げたともいうべき無慈悲なる殺人鬼を追い詰めるという相反の見事な対比。文章は平易。ひたすらにスピード感を重視する。
息苦しいまでのサスペンスに溢れた類なき傑作だ。
評価 ★★★★★☆
- 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫
- 購入: 30人 クリック: 1,008回
- この商品を含むブログ (216件) を見る
- 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
- メディア: 文庫
- 購入: 23人 クリック: 52回
- この商品を含むブログ (177件) を見る