海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「雨を逃げる女」クリストフェール・ディアブル

1977年発表、仏推理小説大賞作。薄墨のような闇の中で展開するサスペンスは、フレンチミステリならではの味わいで、小品ながらノワールの香りも漂う。

主人公は、タクシー運転手のコール。雨の降りしきる夜、街を彷徨ったいた若い女を拾う。手には拳銃、語る内容も謎めいていた。名はコーデリア。家庭内のいざこざでやけ気味になっていた男は、成り行きで一夜を共にする。同じ夜、街のチンピラが工事現場で射殺され、ちょうど女と出会った時と場所が一致した。コーデリアを殺人者として疑いつつも、コールは妖しい魅力に抗することができず、自らも事件の渦中へと呑み込まれていく。真相はやや強引ながらも、自滅していく男の焦燥を抑えた筆致で描いている。

 評価 ★★★

雨を逃げる女 (角川文庫)

雨を逃げる女 (角川文庫)