海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「殺人者の顔」ヘニング・マンケル

読み終えるまで随分と時間が掛かった。
移民問題を抱えたスウェーデン社会を背景に、老夫婦の殺害事件を捜査するくたびれた刑事を描いたストレートな警察小説ではあるのだが、いかんせん地味過ぎる。真犯人に辿りつく切っ掛けが、ある特殊能力を持った人間のおかげであることも釈然としないし、何よりも冴えない主人公に魅力を感じられなかった。
テーマの掘り下げ、刑事群像、主人公身辺のドラマ、中途のサスペンス、クライマックスに向けての盛り上がり方、味わい深い文体、など全てに於いて物足りなさを感じた。
そもそも、なぜ老夫婦は残虐に殺されなければならなかったのか。

第1作以降、どんな成長を遂げているかは知らないが、続けて読む気は起こらない。
流石に、マルティン・ベックシリーズと比べるのは酷でしょう。

評価 ★☆

 

殺人者の顔 (創元推理文庫)

殺人者の顔 (創元推理文庫)