海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「この世の果て」クレイグ・ホールデン

様々なエピソードを積み重ねながらも全体的にまとまりがなく、テーマも絞り切れていないため、読後感はすっきりしない。やたらと多い登場人物と、ぶつ切りの場面転換のため、前後の状況が混乱する。それは多分に日本語として熟されていない翻訳の所為でもあるだろう。

金と武器入手の特命を帯びた狂信的カルトの信者二人が、その途上で出会った男を騙して犯罪に巻き込む。犯行後、からくも逃げ延びた男は、信者の一人である女と共にカルト教団の聖地があるアラスカを目指す。無論、己の潔白を証明するためだが、政府の要人やら軍人らも入り乱れ、教団を率いる俗物の教祖と対峙する展開が不明瞭で、読者をおいてけぼりにする。前作「リバー・ソロー」が秀作だっただけに、いったいホールデンはどうしてしまったのだろう。次作に期待する。
評価 ★

 

この世の果て (扶桑社ミステリー)

この世の果て (扶桑社ミステリー)