海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「武器の道」エリック・アンブラー

次作の「真昼の翳」でもそうなのだが、導入部ではシリアスなスパイ・スリラーと見せ掛けつつ、〝曲者〟作家アンブラ―はストレートな展開をとらずに読者を翻弄する。1959年発表でCWA賞も受賞した本作は、革命家が暗躍するインドネシアを舞台に武器密輸を題材としたものだが、兵器売買を巡っての欲深い人間どもの思惑と行動は、不信と虚栄に満ち当然のこと混乱していく。その不様ぶりが生み出すユーモアが楽しめない私には、やや苦痛な代物だった。

評価 ★★☆