元犯罪者バンカーが服役中に執筆し、出版後は高い評価を得たという曰くつきのクライムノベル。
自らの過去を基にしていることもあり、仮釈放から再び犯罪に手を染めるまでをリアリティ溢れる展開で読ませるが、やや気負い過ぎてテンポが失われているのが残念だ。だが終盤に至り、追い詰められていく男の焦燥は重苦しいまでの緊張感に満ち、仲間への不信が躊躇なく殺人へと繋がることの狂気性も見事に表現している。
ただ、バンカー自身の心境を反映したが如きラストは甘いと感じた。ノワールとは、極論を述べれば破滅の文学であり、本作はその一歩手前で逃避する。底辺で生きざるを得ない人間らを描くことで社会批判を加えながらも、最後には単なる己の悪運の強さを肯定し中和することに、真の「救い」があるはずなどないからだ。
評価 ★★☆
- 作者: エドワードバンカー,Edward Bunker,沢川進
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/09
- メディア: 文庫
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