海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「闇の報復」F・ポール・ウィルスン

「ナイトワールド・サイクル」全6部作の第5部。光と闇による凄まじい闘いが展開する最終作へと向けて、これで全ての「役者」が出揃ったことになる。前作で復活を遂げた魔人ラサロムが、再び強大な力を取り戻すまでを描いており、神父ビル・ライアンを主人公とする。老いたる超人グレーケンは、終幕にてラサロムと対峙するが、己の無力を自覚し、暗い予感に打ち震える。

本作に派手さは無いが、子どもを持つ親にとっては辛い場面が続き、心理的な恐怖感に満ちている。我が子のように愛していた孤児ダニーを、ラサロムの策略によって自らの手で地獄へと突き落としてしまうライアンの哀しみと怒りは、あまりにも深く、重い。

評価 ★★★

闇の報復〈上〉 (扶桑社ミステリー)

闇の報復〈上〉 (扶桑社ミステリー)

 

 

 

闇の報復〈下〉 (扶桑社ミステリー)

闇の報復〈下〉 (扶桑社ミステリー)