海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「レリック」ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド

いわゆるモンスターパニックもので、娯楽性を重視し、プロットや描写に映画的手法を豪快に取り込んでいる。というよりも、同系統映画からの強い影響のもとに創作したのだろう。
真相が明かされるエピローグこそ、本作の肝なのだが、スピード感溢れる筆致で冒頭から疾走し、ラストまで緊張感が途切れない。突然変異で生み出された怪物の謎解きには、科学ジャーナリストでもある著者らの大胆な進化論が含まれており、興味深い。エボラ・ウイルスの驚異をまとめたたベストセラー「ホット・ゾーン」の著者リチャード・プレストンは、ダグラスの実兄。その血筋か、本作でも科学的な知的興奮を喚起する要素が抱負に盛り込まれており、モンスターが暴れ回るだけの単純なスリラーには仕上げていない。とにかく、本作のような何でもありのホラ話は、細かいことは気にせず、徹底して楽しむことに限る。

 評価 ★★★☆☆

レリック〈上〉 (扶桑社ミステリー)

レリック〈上〉 (扶桑社ミステリー)

 
レリック〈下〉 (扶桑社ミステリー)

レリック〈下〉 (扶桑社ミステリー)