海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「殺人症候群」リチャード・ニーリィ

サイコ・サスペンスの先駆的作品。
構成、トリックは充分練り込まれており、主な舞台となる新聞社の様子は作者自身の経験が生かされてリアリテイに富む。
ただ、本作の肝となる真相は、早い段階で分かってしまう。しかも、文庫本の解説者が、クイーンの盤面の敵との類似性を述べており、先に解説を読めば、仕掛けられた技巧に察しがついてしまうのだ。
だが、語り手に応じて変幻する凝った文体や、次第に明らかとなる殺人者の悲劇的な過去、さらに終章の一文字がもたらす余韻など、読みどころは尽きない。

評価 ★★★★

 

殺人症候群 (角川文庫)

殺人症候群 (角川文庫)