海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「自転車に乗った警視」ティモシー・ウィリアムズ

イギリス人作家がイタリアの地方都市を舞台に描く警察小説。主人公は公安警察警視トロッティ。1978年、モ—ロ元首相が極左テロリストグループ「赤い旅団」に誘拐(後に殺害)されるという不穏な時代を背景にしつつも、地方色豊かなローカル・ミステリとして味わい深い。
トロッティは知人の子が失踪した事件を捜査するのだが、自動車の通行が禁止された街の中心部をタイトル通り自転車に乗り関係者をあたっていく展開は新鮮な印象を与える。やがて街の市長自身が絡む事の真相が徐々に明らかとなり、トロッティの反骨精神に火を付ける。

当時の文春文庫は、地味ながらも良質の海外ミステリを発掘・出版していた。勿論ルメートルやエルロイにも力を入れて欲しいが、話題作やベストセラー狙いばかりでは、せっかくの機運も一過性のブームで終わりかねない。


評価 ★★★

 

自転車に乗った警視 (文春文庫 (275‐15))

自転車に乗った警視 (文春文庫 (275‐15))