海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

2022-05-02から1日間の記事一覧

「鼠たちの戦争」デイヴィッド・L・ロビンズ

第二次世界大戦に於けるドイツ対ソ連で最も過酷な戦場となったスターリングラード。記録によれば、1942年8月から5ヶ月間にもわたった攻防での死者は200万人。当初60万人いた住民は、戦闘終結時には1万人を下回る数しか生き残れず、まさに死の街と化した。…

「善意の殺人者」ジェリー・オスター

1985年発表作。この作家独自のあくの強さが印象に残る警察小説で、なかなか読ませる。発端はNY地下鉄。電車内で女を強姦しようとしたチンピラが、助けに入った正体不明の男に射殺された。偶然乗り合わせた乗客らは当然の如く逃亡した男をかばい、メディア…

「大統領候補の犯罪」ダグラス・カイカー

1988年発表作。派手さはないが味わい深い秀作「クラム・ポンドの殺人」に続く新聞記者マックシリーズ第二弾。主要な登場人物はそのままに、よりメインプロットに重点を置いている。前作のなんとも言えない人間味溢れる情感は薄れているが、自らもジャーナリ…

「ハンターにまかせろ」エリック・ソーター

1983年発表作で、これも積読の山から発掘。安っぽい装丁やB級のタイトルとは裏腹に、骨のあるハードボイルドに仕上がっている。主人公は元ジャーナリストで現作家のハンター。或る日、歳の離れた友人ビリー・ライが謎めいた言葉を残して消える。やさぐれた…

「笑いながら死んだ男」デイヴィッド・ハンドラー

ゴーストライター/ホーギーシリーズ第一弾で1988年発表作。コメディアン2人組で一世を風靡しながらも、解散後は落ちぶれていった片方の自伝をホーギーは引き受ける。最大の売りは、元パートナーと不仲となった原因。だが、頑なに本人は過去を明かすことを…