海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「笑いながら死んだ男」デイヴィッド・ハンドラー

ゴーストライター/ホーギーシリーズ第一弾で1988年発表作。
コメディアン2人組で一世を風靡しながらも、解散後は落ちぶれていった片方の自伝をホーギーは引き受ける。最大の売りは、元パートナーと不仲となった原因。だが、頑なに本人は過去を明かすことを拒否し続けた。徐々に明かされていく愛憎と不信。ホーギーは、プライドを捨てきれない偏屈な男に辟易しつつも、隠された事実を掘り起こすが、何者かが自伝発行をやめさせようとするトラブルが続発。ついには〝男〟の死が訪れる。

核となる殺人は中盤を過ぎてから。平易な文体で読みやすいが、事件が起こるまで引っ張るエピソードが地味なため、中弛みしている。ナイーブな主人公の造形はすでに仕上がっており、本シリーズ一番の魅力でもあるのだが、それだけではさすがに辛い。物語をどう形作るか、まだ迷いがあるのを感じた。助走といったところか。
評価 ★★