海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「ハンターにまかせろ」エリック・ソーター

1983年発表作で、これも積読の山から発掘。安っぽい装丁やB級のタイトルとは裏腹に、骨のあるハードボイルドに仕上がっている。

主人公は元ジャーナリストで現作家のハンター。或る日、歳の離れた友人ビリー・ライが謎めいた言葉を残して消える。やさぐれたビリーは、過去に何度もトラブルを背負い込んでいた。彼の恋人に頼まれて、その行方を捜し始めたが、これまでと違うのは、麻薬の売人らもビリーを追っていたことだった。さらに、地元選出の下院議員の取り巻きや元FBIの連中らが、ハンターの行く先々で怪しげな動きを見せた。やがてビリーの知人の女が殺され、事態は荒々しい展開を辿り始める。

文章や構成力は決して上等とは言えないが、テンポ良く場面を切り替えてスピード感に満ちる。終盤に至り、ビリーの生い立ちにまつわる因縁的な闇を照らして、パラノイアに憑かれた人間の狂気を暴き出している。真相もロス・マクドナルド的で驚くが、亜流という訳ではない。当時のハードボイルド作家は、ハメット/チャンドラー/ロス・マクの影響を少なからず受けていたということなのだろう。
主人公ハンターの造形も決して深いとはいえないのだが、チンピラ相手に腕っ節が強いところを見せるなど、これまでのハードボイルド小説に倣いつつ、独自のスタイルを築こうとしている節が見える。
評価 ★★★