1986年発表「奪還チーム」シリーズ第3弾。冷戦下の東ドイツを舞台に緊迫感溢れる活劇を展開した第1作「A-10奪還チーム出動せよ」は、冒険小説としては稀有なカーチェイスを主体にしており、一気にトンプスンの名を知らしめた。本作は日本向けに書き下ろされたものだが、肝心のカーアクションは控えめながらも充分楽しめる。
分断されたドイツの再統一を測る西ドイツの将軍率いる二部隊が東と西に分かれ米ソ核基地を占拠、米英仏ソ4軍の即時撤退を要求する。図らずも、事実確認のために該当国特命の三人と東側の基地に送り込まれた奪還チームのマックス・モスは、ミサイル制御のコントロール・ボックス奪取のために決死の行動に出る。プロットは至ってシンプル。僅か数年後には東西統一は叶うのだが、当時のドイツ人民の悲願を大胆に取り入れたストーリーは、荒唐無稽とはいえエンターテイメントに徹したものだ。飛行機や自動車に関するマニアックな描写もトンプスンならでは。
評価 ★★★