海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「平和」を踏み躙るもの

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似非平和イベントに成り下がった「オリンピック」終了直後の2022年2月24日、ロシアがウクライナを侵略した。日本のマスメディアは一様に〝侵攻〟という曖昧でふやけた言葉を使っているが、独立国家の主権を侵し、暴力を用いて領土を奪い取る明白な侵略戦争である。
20年以上にもわたり恐怖政治を敷いてきたファシストプーチンの暴挙によって、今現在も尊い生命が奪われている。前近代的イデオロギーに囚われ、己の妄執のまま突き進む狂気は、旧ソ連が生み出したサイコパススターリンの末裔と呼ぶに相応しい。いずれプーチンがこれまでの独裁者と同じ無様な末路を辿ることは間違いないが、この男とそれに盲従する人命軽視の卑劣な特権階級が居座り続ける限りは、ロシアの覇権主義はさらに肥大化し、平和はいつまでも蹂躙されていくだろう。

世界的な反戦運動の拡がりを横目に、各国政府は人命よりも極一部の支配層の既得権益を優先する損得勘定のみで動き、戦争終結後の勢力図をシミュレートしつつ、収奪したカネと生け贄を注ぎ込み、現体制の延命を模索する。一方、中国の独裁体制は推し進める覇権政策のケースステディとして、プーチンの横暴/狂態に対する世界の反応を注視し、有事に於ける国内外の情報/言論統制のあり方を修正する。その中国を米国があらゆる諜報活動によって分析、新たな冷戦/対立構造での立ち位置をずらし、〝次〟に目論む対中国の謀略に備えている。

一方、日本政府はといえば、米国の第一等従属国としてのポジションを死守するべく、右往左往しているのが現状だ。笑えないのは、ロシアと同等の力を持つと過信し、図に乗って無駄なミサイルを撃ちまくる北朝鮮の愚行を〝好機〟と捉え、逃げ足だけは早い極右エゴイスト/安倍晋三の如き卑怯者が腐り切った地中から頭を出して「核共有」(要は核武装論)という念仏を唱え始めていることだ。核爆弾を落とされた唯一の被曝国であり、東日本大震災での原発メルトダウンという未曾有の災厄を経てきた此の国で、反省も羞恥心も無いまま堂々と妄言を吐くその姿のなんと醜悪なことか。もはや「戦後」という記号が意味を成さない日本を破滅させるのは、口角泡を飛ばして実体無き「愛国心」を煽る政権に群がる、こららの〝平和を踏み躙る者〟どもである。だが、戦争になれば、真っ先に核シェルターに逃げ込むのは、安倍をはじめとする自称愛国者なのは想像するまでもない。ウクライナの〝悲劇〟は、有史以来延々と続いてきた人類の〝非叡智〟を物語る。明日にでも自分の住む国が同様の地獄に突き落とされるかもしれない。今、此の国では憲法改悪によって戦争が出来る国を作ろうとする政党が権力を握り、米国の捨て駒として差し出そうとしているのだから。

脆弱な者ほど、肉体的/言葉の暴力へと向かう。対話によって解決策を導くことの出来ない馬鹿によって、これまでどれほどの数の尊い生命が奪われてきただろうか。戦争を起こす側の〝理由〟など全てはまやかしであり、いずれは妄想の「大義」は崩壊する。そして、後に残るのは無残な屍の山と、愛する者を奪われた人々の憎悪のみである。命と等価なモノなど何もありはしない。それこそ、血の海に立ち、唯一悟る「真理」だ。極論を述べれば、戦争で殺された人々が我々に遺すものとは、一切は「無意味」であるということだ。この「無意味である」という捉え直しにこそ「意味」がある。愛する人を戦争によって失う。そこに「生きることの意味」を見出すことなど、出来るはずがないからだ。

世界は何故変わらないのか。簡単だ。変えたくないひと握りの奴らが権力を握っているからだ。何故、平和は続かないのか。簡単だ。平和な社会では、カネが儲からないひと握りの奴らが牛耳っているからだ。では、どうするか。結論は自ずと導き出される。己の国を守れ/己の元首を愛せ/己の人種を尊べ。そんな戯言を吐く者どもの薄汚い仮面/虚飾を剥ぎ取って白日の下に晒し、人々と怒りを共有し、敢然と立ち向かい、平和を踏み躙るもの全てに「否」を突き付けることだ。不遜にも「変えられない」と驕り高ぶる奴らを変えてやることだ。

平和を願う人々の力を侮るな。