海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「マイ・スイートハート、マイ・ハニー」アンドルー・コバーン

ボストン・マフィアの大物ガーデラの両親がチンピラに惨殺される。その事件を利用してマフィア壊滅を画策するFBIは、囮捜査官(暗号名〝スイートハート〟)を接触させて警察の内部情報を洩らし、ガーデラに復讐を遂げさせる。〝スイートハート〟は、州警の現役警部補であり、娘2人と離婚寸前の妻がいた。マフィアとFBI、敵か味方かといった腹の探り合いの中、ガーデラとの接近によって、銀行家や政治家との闇の繋がりを入手し始めた〝スイートハート〟は、やがてガーデラの最側近にいる意外な人物が、先に送り込まれたもう一人の囮捜査官〝ハニー〟であることを知る。

場面転換が早く、テンポ良く話は進むのだが、人物の掘り下げ方が今一つで、本来なら大いに盛り上がるクライマックスもややぎこちない。非情に徹しきれないマフィアらしからぬ男、ガーデラの優しくも悲しい最期が印象に残る。

評価 ★★☆

 

マイ・スイートハート、マイ・ハニー (角川文庫)

マイ・スイートハート、マイ・ハニー (角川文庫)