海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「スパイたちの聖餐」ビル・グレンジャー

第一作から人物造形が深化しているとはいえ、完成度はまだ足りないと感じた。
ベトナム戦争時、CIAは宣教師や新聞記者などを工作員として利用していた。その一人、宣教師タニーがタイとカンボジアの国境近くに姿を現わす。行方不明となってから20年が経っていた。不可解な事態に合わせるように各国情報部が活発な動きを見せ始める。米国Rセクションのデヴォローは真相を探るため、謀略の渦中へと潜り込んでいった。
真相が明かされるのは終章だが、やや漠然としたもので、精緻さに欠ける。説明を端折るため、全体の構造が掴みづらい。レン・デイトンのスタイルに近いものがあり、詩情を交えつつ、非情な諜報戦を冷徹に描こうという意気込みは伝わってくる。だが、まだぎこちない。

評価 ★★

 

スパイたちの聖餐 (文春文庫 (275‐12))

スパイたちの聖餐 (文春文庫 (275‐12))