海外ミステリ・レビュー

……新旧の積ん読本を崩しつつ

「標的の原野」ボブ・ラングレー

1977年発表の処女作。不条理な誘拐事件を発端とする本作は、中盤まではサスペンスが基調、後半に至り極寒の山岳を舞台にマンハントが展開する。ただ、冒険小悦としてはまだ萌芽のレベル。人物造形の浅さや、余分と感じるエピソードの挿入で物語の密度が弱まっている。とはいえ、筆致は瑞々しく、新たな旅へと出立したラングレーの熱い想いは伝わってくる。散見する冒険への息吹。環境破壊の問題を組み込んだテーマ、狂気の淵にいる犯罪者の哀しい半生など、印象に残る部分は多い。当然、ラングレーファンならば〝買い〟である。
評価 ★★★